夏休みはもうとっくに終わったというのに、まだ蝉が鳴いていてビビる。
10月も折り返したというのに。
今年の夏はあまりにも暑くて、土中で危機を察した蝉が羽化をキャンセルしたらしい。それで暑さが50年前の7月くらいになった10月になって、一斉に羽化したのだ。
今年は4月くらいから一気に暑くなって、8月にピークに達し、10月になってようやく心地のいい夏になった。去年は3月から暑かったので、まぁマシな部類だろう。
思えば、秋というものをあまり実感したことがない。
11月くらいまで暑いくせに、12月になると一気に気温が下がって大雪が降ったりするから、かつて秋と呼ばれていたものはほんの2〜3日の間、やけに過ごしやすい気温の日だけになってしまった。
昔はちゃんと四季があったらしい。
今でも秋のセールとか春のセールとかあるけど、季節感として肌で実感するのは難しいものだ。
紅葉とかすすきとか月見バーガーとか、そりゃ秋っぽいものはあるけど、秋っぽい要素というだけで、絵本とか小学校の教科書で見たような、セーターで外をうろうろして焼き芋をホクホク食べ、木枯らしに頬を赤らめるみたいな肌身で感じる本物の秋は、もう日本にはない。
日本にはないが、アルゼンチンにはあるらしい。
ニュースでアルゼンチンの市街地での見事な紅葉や、澄んだ空の遠くに浮かぶ雲とか、吹きすさぶ木枯らしみたいな風が吹いているさまを見た。秋に焦がれた日本人がアルゼンチンを訪れているという。
秋、きっといい季節だったのだろうな。
夕暮れに、ヒグラシが鳴く。
消えてしまった秋を想って、たそがれてみる。
扇風機がカタカタ首を振る。